21世紀型教育のススメ

東京都文京区の学習塾ESCA、大学や専門家と連携したマグネットスクール、教材作成などを手がける会社(エスカルチャー株式会社)の代表取締役のブログです。

素人が第1回人工知能EXPOに行ってきた感想

前々から人工知能というものに興味を持っていたので、人工知能EXPOに行ってきた。本業は教育者であるが、教育とはまったく違った観点からAIに興味を持っていたこともあり、今日は教育者という立場で行ったのではないということを、先に申し添えておく。では、ずぶの素人から見た人工知能の展示会について、所感を書いていこうと思う。

 

※ちなみにディープラーニングとか専門用語を、素人が軽々しく言ってしまうことに対して個人的に少々の抵抗があるので、ちょっと頭の悪い人みたいな文章になっています。また、節々で「いや、それは違うでしょ」というところがあるかもしれませんが、あくまで素人の感想なので、温かく見守ってください。

 

 1.需要と供給のバランス

会場について、まず最初に思ったのは、AIの市場として、需要と供給のバランスが合っていないということだった。とはいえ、これだけ話題になっていることであるので、私のような野次馬的な人達も多いのであろう。会場に入るには受付手続きをしなければならないのだが、出展者や会場に比べて入場者が多いのか、臨時の受付ブースが1つではなかった。

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中に入るとさらに人ごみが凄かった。通路は人が満杯で、企業のプレゼンを聞くどころではない。端で出展している企業に関しては、パンフレットを貰うのが関の山であった。

 

野次馬も多いとはいえ、AIに関してのニーズは高い。それも、製造業やゼネコン、エネルギー系など巨大な金額のプロジェクトを持った企業との親和性が高いだけに、今からでもAI市場に乗り込んで勝負したい衝動に駆られる。

 

2.今後の主流はプラットフォームビジネス

ざっくりと会場を見て回って思ったのは、今のAIの主流は大きく分けて2つあるということ。1つ目は学習済みAIの提供、2つ目は未学習のAIを、ユーザに合った形で学習させるプラットフォームの提供である。

 

AIと聞くと、「知ってはいるけど、どうせ優秀なプログラマー抱えてるところしか使えないんでしょう。うちは関係ないな。」という人が大多数であると思う。事実、自動運転、画像のタグ付け、Siriなど、大企業がAIに学習させ、提供している商品を購入することくらいしか、自分個人としてAIの恩恵を受けたと感じる場面はないのではなかろうか。

 

AIの主流のうちの1つ目は、確かにそのような「学習済みのAIの提供」であった。学習済みであるから、消費者や企業も簡単に恩恵を受けることができる。しかし、学習済みのAIというのは、使うのは簡単だが、カスタマイズが難しい。自分自身(自社)の恩恵を最大化するには、AIの学習から手をつけ、最適なAIを作らなければならない。そこで登場するのが、誰でも(というのは言い過ぎかもしれないが・・・)使えるAIの学習プラットフォームの提供である。

 

実をいうと前々から、googleが一般向けにAIの学習ができるツールを公開している(テンソルフロー)。しかし、これに関してはpythonと呼ばれる言語を使えなければ学習させることができない。それでは企業として気軽にAIを使えるということにはならないのだ。理想型は、自分自身や、自社で抱える専門家が、直接AIをカスタマイズできるようなになることである。

 

3.プラットフォームの提供により専門家が自分の領域で勝負できる

私が今回一番興味を持ったのは、東工大発のベンチャー企業である株式会社クロスコンパスである。同社が提供するプラットフォームのプレゼンテーションも拝聴したが、他のプラットフォームよりも簡単に使えそうなものだった。簡単に使えるということは、機械学習をさせる段階でプログラマーを必要としないということで、これは企業にとって非常にメリットが大きい。これには2つの理由がある。

 

1つ目の理由は、プログラマーに支払う外注費用を削減できるという点である。自社の人員で機械学習ができるのであれば、外注する必要はない。日本で一番高いのは人件費なのだから、これは大きなメリットである。

 

2つ目の理由は、専門家の思考をダイレクトに活かせるということである。これは通訳みたいなもので、間にプログラマーが入ると、専門家の思考にバイアスがかかってしまう恐れがある。優秀なプログラマーであれば、このバイアスは少ないのだろうが、それでも直接思考を反映させるのであれば、専門家が直接機械学習の段階から扱えるにこしたことはない。

 

このように、今後AIを提供する側の企業は、学習済みAIだけではなく、対企業のためのプラットフォームビジネスを加速させていくと考えられる。このような流れの中で、今後重要になってくるのは、先ほどの2つ目の理由にも挙げた、AIを利用する側の専門家のスタンスである。

 

4.AI利用者の今後のスタンス

先ほど、プラットフォームが提供されれば、プログラマーは必要ないと述べたが、これはあくまで理想論である。というのも、誰でも使えるといっても、どのようなデータを与えて学習させるか、解析結果をどのように判断するかということは、最終的に人間の判断にゆだねられるからである。

 

この「判断を行う」人間は、今のところまだ出てきていないように思える。プラットフォームの提供側も、提供先企業の分野に関しては素人であるし、企業側(製造業、インフラ、建設業、エネルギーなど)もAIやデータサイエンスについてはまだまだ知見不足であるからだ。

 

お互いが知見不足である領域は、頭のキレるコンサルタント的な人にとっては非常に魅力的な市場になってくる。社内においても社外においても、学習ロジックを構築したり、データを分析できる人は今後間違いなく重宝される。

 

つまり、プラットフォームを提供する側の企業は、ある程度美味しい業界の専門家を雇ってコンサルまで行うともできるし、プラットフォームを利用する側の企業は、早急にデータ分析できる自社の人間を育てる必要がある。さもなくば、データ分析は全て外注に頼ることになり、競争から取り残されてしまう恐れがある。

 

5.教育者として思うこと

今後コンサル脳を持っている人材が、企業で重宝されるということを書いたが、コンサル脳というのは、ある程度学歴に比例すると思っている。データ解析には数学の知識が確実に必要になってくるし、企業においては、その解析結果や機械学習のロジックを説明するための国語力だって必要だ。べつに全ての人がコンサル脳になる必要もないのだが、これからの時代に重宝されることは間違いないと思う(もちろん、これまでも重宝されてきたのだろうが、今後はこの流れが加速すると思う)。

 

前回の記事「棋士:藤井聡太氏のニュース記事から考える一般常識と専門知識の境界線 」でも書いたが、ある程度のデータ解析や数学の力というのは、確実にこれからの一般常識になっていく。「受験勉強なんて必要ない」と言っている人の気持ちも分からなくもないのだが、そうはいっても受験は必ず通る道である以上、受験勉強の中で何を学ぶか、どう社会で応用していくかというのを考えながら学習することが不可欠である。また、そういうことを教えてくれる教師が今後増えていけば良いなと思う。