21世紀型教育のススメ

東京都文京区の学習塾ESCA、大学や専門家と連携したマグネットスクール、教材作成などを手がける会社(エスカルチャー株式会社)の代表取締役のブログです。

数学の勉強法

本日の話題、教育業界の方々からは「当然じゃん」と言われてしまいそうですが・・・。

体験授業などで併塾にいらっしゃる生徒が、意外と意識していないことがあります。

ちなみに、数学の勉強法というタイトルで書き出したのですが、他の教科でもいえることです。

 

それは、「覚える」、「理解する」、「考える」の切り分けをするということ。

 

勉強の効率を考えた場合、この3つの切り分けは、個人によって異なります。

そして、その切り分けを生徒それぞれに見つけ出すのが先生の役割だと思っています。

※もちろん、勉強の効率を考えなければ全員に理解し、考えるところまでを教えるべきだと思いますが。

 

例えば、私の指導したことのある生徒さんの中に、数学が出来ないので教えてほしいという子がいらっしゃいました。

その子は図形が苦手だというので、図形の証明の単元のテストを行ったのですが・・・

 

確かに出来ていませんでした。

 

原因はもの凄く簡単で、図形の証明に必要な、図形の性質を覚えていなかったのです。

お母様はテストの点数だけで数学が出来ないという結論を出しておられましたが、

よくよく見てみると、図形の証明に入るまでのテストの点数はそこまで悪いものではありませんでした。

要するに、覚えるべきものを覚えずに、いきなり点数が下がったので、数学が苦手になったと思われたのでしょう。その生徒も次のテストでは良い点数を取って来たので安心しました。

 

定義や公理は「覚えるべきもの」なのです。

数学はロジックの学問ですので、定義や公理を覚えていなければ、その先の議論が出来ません。

 

覚えるか、覚えないかが分かれてくるのは「公式」や「解法」です。

公式は公理から派生したものなので、頑張れば導きだす事が可能です。

解法も発想力のある子であれば程度の差こそあれ、たくさん覚える必要はありません。

私も点数を取らせるために、公式や解法などは、生徒の様子を見ながら覚えるように言う事もあります。

さて、覚えるのは良いのですが、公式や解法が定義や公理と違うところがあります。

 

それは「理解する」というステップを踏まなければならないということ。

この「理解する」というステップを踏ませるか否かは、その生徒の目標や、レベル、残された時間を考慮して決めます。

 

例えば、数学的思考が得意ではない子で、受験まで残された時間が少ない、志望校は受かるかどうかのギリギリ・・・という生徒には、この理解するというステップを省略することもあります。

また、数学の成績が低く、数学が嫌いだという生徒にも、しばしばこのステップを省略することがあります。なぜなら、成績が悪い教科が嫌いというのはもっともなことだからです。まずは手っ取り早く成績を上げて、その教科が好きになるようにするわけです。その後じっくりと理解させていくわけです。

 

話が少しそれましたが、上記のような生徒でなければ、「理解する」というステップを踏ませます。

言わずもがなですが、「知っている(覚えている)」と、「理解している」は全くの別物です。

では、どのようにしてこれを見分けるのか。

それはロジカルシンキングでも用いられる「so what」、「why so」を生徒に問いかけることです。

集団学習でしばしば見受けられることですが、生徒の回答が合っていたので、この子は分かっているんだろう!と思われる先生やご家庭の方は意外と多いです。

が、何でそうなるの?先生に解き方を説明してくれというと、「・・・なんて言ったら良いか分からない」という答えが返って来たりするのです。

この、「だからどうなるの?(so what)」、「なんでそうなるの?(why so)」を繰り返すことが大切です。

 

私は、理解させるステップを踏ませるために、解法を教えた後に、解説、その後その解法を用いる別の問題を解かせ、解法を人に説明させるという方法を用いています。

人に教えるときに、完全に理解していなければ必ず論理が破綻します。

それを見抜き、教える事が出来るまで繰り返すのです。

 

最後に「考えること」。

これは「覚えること」、「理解すること」というステップを経て、はじめて実現可能です。また、「考えること」は、最終的に「表現すること」とセットにしなければなりません。

さて、考えるプロセスでは、覚えたこと、理解したことを用いて、全く新しい問題にチャレンジさせます。(授業でやっている範囲の問題なので、全く新しいと言えば語弊があるかもしれませんが。例えば、その子のレベルでは解くことが難しい、応用問題をやらせるくらいのイメージです。)

また、考えることのプロセスでは時間を多めに取ります。授業は時間に限りがあるので、自習の時間や、家庭学習で考えるプロセスを行うように言うことが多いです。

さて、「考える」プロセスなのですが、単に考えるだけではいけません。

大事なのは自分の考えたことを「表現する」こと。

宿題をやってきた生徒が、分からないところを白紙にしていることが良くありますが、それは「考える」というステップを放棄していることと変わりません。何かしらは書くように促しましょう。これは理解するステップでも重要なことなのですが、理解するプロセスと違うところは、問題のレベルです。自身にはハードルが高い問題について、分からないなりに自分のロジックを組み立て、表現することが重要です。

(社会に出た方ならご経験があるでしょうが、答えの定まらないものに自分なりのロジックを構築する能力は非常に重宝します。むしろ勉強ではここを教えたいですね。)

 

さて、自分なりに表現ができたら、そこからは教師の仕事です。なぜこのような考え方に至ったのか、論理の飛躍はないか。「so what」、「what so」を繰り返すのです。

慣れてくれば、自身でこの問いかけが出来るようになってくるはずです。ただし、慣れるまでは自分のロジックを否定的に見ることは難しいので、大人が補助する必要があります。

 

さて、ダラダラと書いてしまいましたが、これが私の数学(ひいては他の科目も)の教え方の一部です。

ご参考にして頂けると幸いです。