21世紀型教育のススメ

東京都文京区の学習塾ESCA、大学や専門家と連携したマグネットスクール、教材作成などを手がける会社(エスカルチャー株式会社)の代表取締役のブログです。

学校のテスト採点に関する議論が的外れだと感じる件について

 
ネットで上記のようなことが話題になっていた。
なんでも、習っていないかけ算を使って解いたら、テストでバツになったというものだ。
 
これは採点方法が悪いというよりも問題が悪い。
 
学校の定期テストというのは、学校の先生が自分が教えたことがちゃんと生徒に伝わっているか確認するためのものであるということを考えれば、先生がこれを不正解にするというのも分からなくもない。
かけ算が合っているかどうかということよりも、足し算の意味をちゃんと理解した上でこの計算してますか?ってことを確認したかったんだと思う。
なぜなら、先生は学生が解法を理解しているかどうかを確認しなければならないから。学生が陥りがちな罠として、問題に対する解法を理解しないまま、単に「この方法で解けるから」という理由で解くということがあるが、これだとまったく応用が利かないのである。
 
しかしながら、当然生徒側としてはそんな先生の都合なんて知ったことではないので、このようなすれ違いが起こってしまう。
だったら最初から問題文に「ただし、学校で習った方法で解くこと」と書いておくのが正解だと思う。
※一問ずつに注釈をつけるのが面倒なら、テスト問題の最初に書けば良いだけで。
 
世論としては「いやいや、学校で習ったことだけを使えっていう縛り自体がおかしいのではないか」となるかもしれないが、そんなことはない。先ほども述べた通り、かけ算を意味を分からず使っている子にとっては、意味も分からずにかけ算を使っていたという気付きになるし、そもそも、かけ算という一つのアプローチでしか問題が解けないなんて、おかしいことである。
算数や数学は答えが一つであるから、単純かつ簡単な問題であれば、一つのアプローチをおさえておけば充分である(しかも一番効率的なものを)。しかし、これが社会に出た時には様子が違ってくる。
社会においては正解は一つではない。もちろん、アプローチの方法も一つではない。何らかの制約によって、一番効率的な課題解決手法がとれないことなど多々ある。そのような状況下で、様々な問題解決手法を使いこなすことが出来なければ、折角学んだ受験勉強もなんら社会に役立てることができない。
 
この問題の最大の論点は、記事の中で林先生も言っているが、採点根拠がないことにある。習っていないものを使うことが良いかどうかということは論点にもならない。どうでも良いことである。感覚的に批判している人達には、是非そこを分かってもらいたい。
 
一方で、単なる受験勉強だけではなく、社会的な教育を担っている学校現場(学校に限らない)においては、社会に出てから重要になってくるエビデンスベースドの考え方を徹底して欲しいなと思う。